宇宙線研究所という閉鎖空間内でムラマツが三面怪人ダダに追われる「人間標本5・6」は、ホラー性とSF性がほどよくミックスされた印象的なエピソードです。
しかし、このダダは『ウルトラマン』に登場する宇宙人たちの中でも特に謎めいたキャラクターで、そのためか本エピソードには未解決になっているポイントがいくつかあります。その中でも、特に目立つのが「ムラマツが事件に巻き込まれるきっかけになったバスの転落事故は何だったのか」ということです。
結論から先に書くと、問題の事故はダダが起こしたものと思われます。
根拠1 事故の原因
この事故は、バスのフロントガラスに突然紫色のスクリーンのようなものがかかり、運転手の視界がさえぎられたため起きたものでした。この現象はダダの超能力以外説明はつかないでしょう。
根拠2 取り残された二人
ムラマツと秋川技官の二人が救助されていないことがあげられます。事故現場の処理がおこなわれ、他の乗客がすべて救出された中で二人だけが事故現場に取り残され、しかも負傷していないのは不自然です。これもダダの介入があったと考えるべきでしょう。
根拠3 警官の不思議な言動
事故現場でムラマツが出会った警官の不自然な言動があります。行方不明だったムラマツを見つけながら妙に冷静で何の報告もしようとせず、いかにも感情がなさそうな態度も不自然です。ダダの変身かあるいは憑依されていると見るべきでしょう。(意図的なものかどうか分かりませんが“不審な制服の人物”というイメージは、同じ野長瀬三摩地監督作品である『ウルトラセブン』2話の郵便配達人にも受け継がれています)
以上の根拠から、バス事故は5人目と6人目の人間標本の素材を物色していたダダが、ムラマツと秋川という良質の素材を発見し、二人だけを宇宙線研究所におびき寄せるために仕組んだものと考えられます。
…と、断定したいのですが、上記の推理は僕の完全なオリジナルではなく、僕が以前同人誌「侵略寓話」で読んだある方の推理に僕なりの解釈を加えたもので、皆さんに押し付けるつもりもありません。実際のところ、ダダは秋川に会ってから標本として適当かどうかを分析していますから、事前に狙われていたという仮説には無理もあります。
より判りやすい推理がありましたら、ぜひともご教示をお願いします。
この他にもダダの存在を知らないはずの秋川が「SOS DADA」のメッセージだけで危機を知ったり、ダダが二人を追い詰めたところで何の脈絡もなくミクロ化器が故障したりと、やたら不自然な展開の多い話ですが、その不自然さがダダの謎めいた雰囲気にマッチして独特の味になっていることも確かです。
最後に、このエピソードについてチェックポイントをもう2点記しておきます。
人間標本の行方
人間標本にされた4人の人間やダダに憑依された所員の行方は不明のままです。これは、「科特隊宇宙へ」でバルタン星人に憑依された毛利博士や、「禁じられた言葉」で宇宙に放り出されたパイロットたちも同様で、『ウルトラマン』の世界では宇宙人に拉致された人間は忘れ去られる傾向があるようです。
これについては、彼らの命は宇宙人の手にかかった時点で終わっていて、陰惨なムードを避けるために彼らの運命については意図的に無視されているというのが自然な解釈と思います。しかし、それではあまりにも救いがないので、できれば「ダダの残したミクロ化装置の構造がイデと岩本博士によって解明され全員救出、憑依された所員もウルトラマンに救助された」と個人的には思いたいです。
姿を残さなかったダダ
ダダは宇宙線研究所の周辺だけで行動し、その姿を目撃したのは行方不明の所員たちを除けばムラマツと秋川技官だけでした(強いて加えるならウルトラマンの中のハヤタ)。そのため、ダダの姿形については映像データ等は全く残されず、ムラマツと秋川の証言のみが全てと言うことになります。
おそらく、科特隊が残したとされるドキュメントSSSPの中でも、ダダについては資料が著しく不足して、「ダダ捏造説」などもささやかれたのではないでしょうか?
追伸
このエピソードを最初に見たとき、僕にはダダが三つの顔を使い分けていると言うことがよく分かりませんでした。白黒テレビに幼児のパターン認識能力では、あの三変化を認識するのはちょっときつかったと思います。
*2000年6月7日 @niftyウルトラマンフォーラムで初出の文章を元に改稿・加筆。
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